2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『奇想の系譜』(2)

『奇想の系譜』に登場する画家たちが活躍した江戸時代というのは、狩野永徳をトップにしたヒエラルキー構造が美術の世界にある時代なのですが、この永徳を画聖とする封建的ヒエラルキー構造というのは、狩野派が、徳川幕府という「世俗」の政治権力と一体で…

辻惟雄『奇想の系譜』(1)

辻惟雄の『奇想の系譜』について少し考えてみたいと思います。まず気になるのは、「奇想」という概念の曖昧さです。ここでは岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長澤蘆雪、歌川国芳の6人が「奇想」という言葉で一括りに包括されていますが、ここで…

辻惟雄「絵難房 超辛口評論家」(『芸術新潮』2010.3号)

『芸術新潮』の「辻惟雄×村上隆 ニッポン絵合せ」というコーナーで、辻惟雄が『古今著聞集』から「絵難房」という、どんな絵にも必ずケチをつける男の説話を取り上げて、最近の批評家はみんな大人しいが、村上隆のスーパーフラットを「空気の抜けたパンク・…

椹木野衣『「私」という贈与』

『美術手帖』(2010.3号)に掲載されている、椹木野衣による森村泰昌についてのテキストについて。ここで椹木は、森村泰昌を日本の現代美術における「異人」と規定することで(「彼はあきらかに異人だった」)、そこから、そもそも日本の美術自体が「西洋美…