樋口佳絵・絵画展「みずたま」(art room Enoma)

色使いがロマネスク絵画的。意識しているのか、色数を制約しているのかは分からないが、褐色した赤を基調にした色使いで子供の「イコン」が描かれている。ゴシック以降に登場する彩度の高い「青」は見られない。テンペラと油彩による混合技法が用いられているが、混合技法に特有の細部描写の追求は放棄されており、テンペラ特有の透明性も、油彩特有の光沢もない。あるのは下地(白亜地かジェッソに石膏を混ぜた感じになっている)の乾いた質感だけ。絵具の質感より、下地の質感が優先されていて、フレスコ画的に絵具と支持体が一体化した感じとなっているのだが、枯れた感じの下地に絵具を吸収させているので、絵具の透明感と光沢さが損なわれている。「枯れた」感じを演出していると思うのだが、「地」に対する意識が変わらなければ、絵画的展開は望めないと思う。