床面について(補足)

床面を、文化を産出する机の下にあるものと見ると、必然的に床は机の文化に対抗、反抗する反文化的な場と見られることなる。しかし床というのは、文化を産出する場であったことはないかも知れないが、過っては世界を表象する場であった。もしかしたら建築を装飾する場としては、壁面よりも床面の方が先であったかも知れない可能性もある。床面は始まりから反文化的な場であった訳ではない。床が壁面や天井或いは、机のような上部構造の下に置かれるのは、垂直性を強調していく建築様式に対応出来なかったからである。垂直性を強調した空間の登場によって、人々に上下の意識が強くなる。しかし床面の水平性には平面的な前後関係しかないので、建物の入口付近を「地」、建物の奥側を「天」と区分することでしか、上下の関係を表すことが出来ない。その結果、床面は壁面や天井という上部構造が投影されるだけの場へと成り下がっていく。床を机の文化の下にあるものとする考えも、この延長線上にある見方だと思われるのだが、発想を逆転させて、絵画が壁面から自立し建築の従属を離れたように、床面から自立して建築の従属から離れたのが机やテーブルであると考えてみて、テーブルとタブロー、床面と壁面の関係を捉え直してみても面白いかも知れない。