『モダン・アート、アメリカン−珠玉のフィルップス・コレクション−』展/新国立美術館

エドワード・ホッパー『日曜日』

画面手前にある鋭角な三角形の斜辺の上に男が一人座っている。背景に建物が描かれているのに、どこか不安定な感じ、画面を支えている均等が崩れそうな危うさを感じるのは、この三角形のせいだろうか。よく見ると画面上辺にも鋭角な三角形がある。それは下の三角形が反転した形であるのだが、基本画面分割線を引いてみると、上下が鏡面関係になっていることが分かる。

男の背後に描かれた建物は、正面からではなく、角度をもって描かれているので、画面左下から右上へ伸びていく線と、左上から右下へ向かって伸びていく線が、画面に左から右へ向かう奥行きを与えている。この左から右へ向かう線に、建物の柱の線が垂直に下りてきて、矩形が形成されているのだが、そこに画面右上から左下へ向かう光の線が差し込むことで、画面上に三角形が形作られる。

ホッパーの明瞭な色彩と、空間構成は、どこかピエロ・デ・フランチェスカを思いおこさせる。しかしホッパーの絵画に見られるのは、安定した秩序ではなく、現代人の孤独を反映した危うさである。この作品でもっとも重要な要素は、男の背後に描かれている建物の大きなショーウインドウ越しに見える空ろな空間で、この象徴主義を思わせるようなタッチで描かれた空間は画面に深みを与えている。おそらくこの空間を確保するために、建物を正面から描くことが避けられているのだと思う。



基本画面分割


視線の方向