「歪んだ世界」(四)

4月18日 朝から冷たい雨

自分の住んでいる街から10キロちょっと離れた場所に、そこに足を踏み入れてしまったら、二度とこの世界に戻れなくなってしまうのではないのかと思わせる風景があるという恐ろしさは、怪異的である。なぜ眼の前に、このような風景が与えられているのか、その根拠がつかめず苦しみ歩き回ってしまう様は、どこか美の根拠がつかめずに、作品の周りをうろうろと歩き回ってしまう行為に似ているのだが、そこに「美」はない。そこにあるのは自然に拒絶された人間の孤独さ、あるいは悲しさだけである。海は人間によろこびを与えるが、躊躇なく人間から全てを奪っていく。