天気晴れ。地震によって引き起こされたグロテスクな津波が、町を飲み込み、そこで暮らしていた人々から全てを奪い去っていく。津波という無秩序な世界の前には、老人、子供、若い男女という区別はない。ただ生と死があるだけである。
この無秩序な世界に取り残された人々の困難さを、私たちは映像を通して、あたかも自分がその場に立ち会ったかのように感じている。これは映像の持つ力である。しかし、映像が示す出来事が何であるかを理解することは難しい。なぜなら、それはまだ「言葉」としては表れていないものであるからである。私たちはそれを見ている。しかし、そこには「見えない」ものがある。苦しみや、困難さを、言葉によって対象化することは難しいが、それは困難さを乗り越える力になる。